岡崎市でお盆に想う/「仏壇に手を合わせよ」と、息子から
【中日新聞 「くらしの作文」 投稿記事】
『背中で教えるとは』
お盆がやって来た。仏事の頃になると思い出すのは、若き息子の言った言葉、「仏壇に手を合わせたらどうた。」だ。息子にたいして何かくどくどと説教をしていた時だったかも知れない。
仏や仏壇など全く関心の無い若い息子がそんなことを言うのだった。親子喧嘩はあった。真剣なやり取りで物に当たったり取っ組み合いはしばしばであった。しかし、今度は違った。意表を突かれたというのはこの事だろう。きっと長い間我慢していた言葉だったのだろう。
思えば、「仏さんにお参りなさいよ。」は、私が幼い時祖父母や回りの大人から口癖のように聞かされた言葉だった。子供だった私が、座って真面目に手を合わせた記憶はない。いつになっても脳裏から消えない不思議な言葉の意味が年を重ねるごと意味を持ち出して来た。
仏とは今は亡き父親。息子からすれば祖父。その位牌を背にしていつも偉そうな言葉を投げ掛けていたのだろうか。息子からしてみれば、「それならあなたも仏前に手を合わせよ。」だろう。「あなたの父親を尊敬したか。」である。
自分の親を蔑(ないがし)ろにしていて、「親の言うことを聞け!」は無いだろう。
会社でも同じだ。上司である社長を侮る社員にその部下が付いてくるはずもない。学校で、校長をバカにする教師に生徒が心から慕うはずもない………
息子に諭したいことがあれば、何も言わなくても良かった。ただ息子を背にし、仏前に手を合わす日々で良かった。
背中で教えるというのはこういうことをいうのかと考えた。
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